「健康で幸せな暮らし(Well-Being)」の実現を志す人材育成を目指す現代福祉学部には、福祉サービスの提供と地域コミュニティの再生を総合的に捉える福祉コミュニティ学科が置かれています。しかし、高校を卒業したばかりの新入生にとって、「地域づくり」や「コミュニティ再生」と言われてもピンと来ません。なぜなら、自宅と高校の間を通学で行き来していた彼らの日常の中に、コミュニティが登場する場面はおそらく皆無だからです。
そこで、コミュニティ分野を担当する私の1年生向けの導入教育では、まず、彼らの身の回りにコミュニティという場の存在を感じ取る気づきの機会を設けることを大事にしています。1年生の春学期にコミュニティ分野の教員がオムニバス形式で進める「まちづくりの思想」では、自分の身の回りにある思い入れのある場所を、そこに根差すエピソードとともに3カ所挙げてもらう作業をしてもらっています。すると、仲間と汗を流した高校の部室や、親友と語り合った近所の公園、さらには失恋で涙した海岸の砂浜など、実に多様な場所が彼らたちにも刻まれていることが分かります。そのような想い出の場所を大事にして行く気持ちこそ、コミュニティを学ぶ姿勢に欠かせないものと考えています。
続いて、秋学期の「地域問題入門」では、地域社会が直面する問題が発現している様々な場所、例えば、農山村の限界集落、都市近郊の商店街や団地などを取り上げながら、問題が生じるカラクリを理解するとともに、その課題解決に奮闘する地域の人たちの姿をVTR素材を通して学んでいきます。
このようなプロセスを経て、ようやく学生たちも、地域づくりやコミュティを学ぶ醍醐味に気づき、最前線の現場に行ってみたい、という声も挙がるようになります。ここまで至るには、なかなか時間と手間はかかりますが、主体的に動き始めた彼らは、今度はフィールドの中で地域の皆さんと一緒に成長してくれます。こうして「化けていく」学生たちの存在が、私に大きな刺激と活力を与えてくれるのです。
法政教員の輪
ARCS(探求心喚起) ARCS(親しみやすさ)