私の授業のひと工夫 第17回

ARCSモデルに基づく学習意欲の測定

 「一般教養科目」、特に文化系の学生にとって苦手と言われる「理科系」科目の授業を担当している身にとって、まず気にしなければいけないことは、学生の学習意欲をどのように高めるかと言う問題です。そのために、今まで行ってきたことは、学生を退屈させずに「楽しい」授業を演出するためにはどのようにすれば良いかを工夫することでした。毎回の授業の独立性を高め、読み切り本的にする事で授業の敷居を下げたり、視聴覚教材を使ったり、その日の新聞記事のニュースから入ってみたり等など、多くの教員がやっている努力を私もやっておりました。その結果、授業改善アンケートの満足度は毎年上昇し、自分なりに満足している点もありました。
 ただ、現在の学習ステーションの業務などで、高学年の学生とも接する機会が多くあるのですが、皆「先生の授業は楽しかったです」と言ってくれる割に、「何が楽しかった?」と聞くと、授業内容はほとんど覚えていない事が判り始めました。つまり、「楽しい授業」=「身につく授業」というわけでは無い事を身にしめて感じました。
 ちょうどその時、常盤先生がFDハンドブックに書かれている「ARCSモデル」の存在を知りました。ARCSモデルを使うと、学生の学習意欲を、単に「楽しさ」という尺度では無く「注意(Attention)」「関連性(Relevance)」「自信(Confidence)」「満足感(Satisfaction)」4つの要素に分解して測定することが可能です。そのための、「科目の興味度調査」(Course Interest Survey: CIS)では、受講生に34問の質問をして、その回答を解析することで、学生がどの様に授業に興味を持っているかを数値化することができるのです(「学習意欲をデザインする」J.M.ケラー著 参照)。
 この手の、選択問題型のアンケートは、授業支援システムの得意とするところなので、早速、授業支援システムでCISを実施してみることにしました(図1)。

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図1

 実際のCISの実施にあたっては、日本語表現を改良したバージョン(川上・向後、2013)を用いることにしました。また、授業期間中に行うために成績判定に対する質問を除き、28問で実施しました。授業支援システムで得られたスコア表を、エクセルワークシート上で集計し、ARCS各要素の割合をグラフ化することができます(図2)。

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図2

 (授業支援システムで得られたアンケートデータからグラフを作成する過程は、若干のスキルを要するので、興味の有る方には、ワークシートのサンプルを差し上げたいと思います。)2014年度に実施したCISの結果は「2014年度「生命科学I」ARCSモデル授業アンケート実施について.pdf」にまとめておきました。興味の有る方は、ダウンロードしてお読み下さい。  さて、結論ですが、このアンケートを実施して判明したことは、いわゆる「満足度」が高くても「注意」「関連性」が上がっているわけではないということです。特に、受講した学生が授業内容を覚えていないという状況は、「関連性」の低さが原因だと思っています。ですから、授業を構築する上で、単に面白おかしい授業を作るのではなく、何らかの形で学生の既存の知識との「関連性」を持たせなければいけないと考えるようになっています。その結果、今更ではありますが、「どう教えれば良いか?」という工夫だけではなくて、「何を教えれば良いか?」と言う授業内容に対する吟味も時間をかけて行うようになりました。実は、2015年度も同様のアンケートをとって、少しだけ「関連性」の数値が上がりました。今後、この数値から教育内容に対する学生の反応が評価できるかもしれないと、密かに期待しています。

参考文献