私の授業のひと工夫 第12回

 私は法政大学赴任当初の1990年代後半から、当時80人程度の受講だった「社会教育概論」という講義にバズセッションを導入してきました。講義の後半に小グループに分かれて講義内容にかかわる討議を行い、そのあと討議結果を全体で報告しあうという方法です。私の研究対象である社会教育実践のある事例やパウロ・フレイレの教育思想に刺激を受けて、試行錯誤を重ねながら導入してきました。私独自の方法としては、グループ討議の結果を報告しあうとき、私が司会をしながら各報告内容の要点を板書しつつ全体討議を進めていくことではないかと思います。報告内容を関連づけてとらえられるように、矢印等も駆使して板書します。そうするとまるで黒板は共同のノートのようになり、全体で学ぶ雰囲気が生まれます。  学生たちは初対面同士での小グループ討議や多人数を前にした報告に、はじめはとまどうようです。しかしやがて多くは、他人の意見に耳を傾け、また自分の意見を表面する面白さに魅了されていくようです。講義内容の理解も深まるようで、たまたま講義内容が多くなり、バズセッションが行えなかったとき、「今日は講義内容が難しかったので、バズセッションの時間がほしかった」と感想に書く学生も登場したこともあります。私はこのバズセッションと関わらせて、毎回、「感想・意見メモ」というプリントを配布しています。講義内容について、考えながら「メモ」してもらうためで、ここで考えたことがグループ討議につながるように工夫しています。  受講生が150人前後と増えてもこの方法を続けてきただけでなく、今では講義内容をと問わずできるだけ毎回導入するよう努めています。500名近い別の講義でもこの方法に挑戦しています。グループ分けに時間がかかる,グループのメンバーに消極的な学生が多いと討議が全く展開しない恐れもあるなど弱点もありますが、講義「後」にその内容について一生懸命議論し合う学生たちをキャンパスで当たり前に見かけるようになるまでは、挑戦し続けたいと思っています。