文章表現の実践
前期はエッセイや創作など、比較的自由度の高いジャンルの文章を書かせ、表現することの面白さや楽しみを知ってもらい、後期はそれを踏まえて、ある程度まとまった枚数の論文を書くためのノウハウを身につけさせるのが目標。講義の合間に実作演習を行い、作文には添削を施して返却するため、受講人数は四〇人程としたいが、類似の科目が少ないためか、毎年受講希望者が多く、六〇~七〇人は受け入れざるを得ないのが現状である。 前後期三回ずつ行う実作演習の際はこちらで作文用紙(特注・六〇〇字)を用意し、八〇分で書かせる。テーマは前週に発表し、一週間で充分に構想を練っておいてもらう。下書きをしてきたものを写しても可とする。集めた作文は添削の上コメントを余白に加えて二~三週間後に返却する。その際、特に良かった作品や全員に考えてもらいたいような内容・表現上の問題を含んだ作品を八~一二作程度コピーし、全員に配布して講評を行い、最後に自他の作文についての感想を書かせて提出させる。 学生からの言葉で最も多いのが、「自分の文章を丁寧に見てもらい、何らかの答えが返ってくるのが嬉しい」「同じ学生の文章を読んで刺激を受けられるのが楽しい」というもの。 ここから、レポート等で、文章を書く機会は多いものの、書きっ放しで具体的にどういう評価を受けているのかが分からない、ということを不安・不満に思っている学生が相当程度いることが分かるし、またごく身近な人間の文章を読むことによって、プロの文筆家から受けるそれとは別種の刺激を得られることが、次の作文への動機付けになっているらしいことも伺える。 添削には一人当たり一〇~一五分はかかり苦労は多いが、大部分の受講生が確実に少しずつでも進歩しているのが実感できる。今後は作品集の発行なども検討したい。