キャリア設計の意識付け
情報科学部では「情報化社会をリードする高度情報処理技術者・研究者の育成」を目指しています。しかしながら多くの学生は、入学時、興味が「コンピュータグラフィクス」や「ゲーム」に偏っており、情報系の職業に対する知識が不足しています。3年次に就職活動を始める時期になって「希望職種が見つからない」・「自分をアピールできるものがない」・「企業の募集要件を満たさない」といったことにならないよう1年生のときからキャリア設計を意識させることが必要と考え、そのためのツールとしてポートフォリオシステムを利用しています。
成長の記録簿
情報科学部では、ポートフォリオを「将来の就職・進学という目標に向けた成長の記録簿」と位置付けています。学生には、毎学期の初めに
- キャリアデザイン(将来就きたい職業などの希望)
- 学習計画(そのために力を入れること、学習・履修計画)
- 学生生活(サークル活動やアルバイトの予定)
をポートフォリオシステムに入力し、学期末には半年の活動を振り返って自己評価を行うことを期待していますが、新入生には、まずは「漠然とした将来の夢」や「学びたいこと・面白いと感じる技術や科目」など簡単なことから記入していくよう指導しています。
学生と教員のコミュニケーション
ポートフォリオは、学生と教員のコミュニケーションツールとしても重要な役割を果たしています。学生にとっては、自分から教員にメールを送信したり教員室を訪れたりすることはしづらいものですが、ポートフォリオシステム上でのやり取りが、進路等について教員に相談するきかっけにもなっています。実際、ポートフォリオをきっかけに、友人とともに教員室を訪れる学生も少なくありません。 注意すべきことは、システム上でのやり取りはあくまでも対話のきっかけづくりに過ぎず、これを機会に学生と直接話をすることが大切であるということです。情報科学部では、学生と教員、上級生と下級生のコミュニケーション機会を増加させるために「ガラス箱オフィスアワーセンター(GBC)」を設置しており、GBCの利用をポートフォリオと組み合わせるなどの工夫を行っています。
導入効果と課題
情報科学部のポートフォリオは、学生が進路について考える動機づけになっており、教員とのコミュニケーションラインとしても機能しています。また、教員側にとっては、就職や学習に関する個々の学生の考えを知ることのできる情報源でもあります。 その一方で、ポートフォリオの記入を継続的に行う学生の数が伸び悩んでいるといった問題点もあります。学生がポートフォリオシステムにアクセスする「しかけ」が必要であり、その一例として、GPA・GRE・TOEICの点数・自分の順位といった情報の提供強化を行っています。学年別シートで過去を振り返ることもできます。
- 情報科学部のポートフォリオシステムは、2009年度文部科学省教育GPに選定された取組み「高度情報処理技術者を目指す学士力の育成」の一環として導入されています。取組み全体についてはこちらをご参照ください。
- 情報科学部のポートフォリオについては、第7回FDフォーラム「eポートフォリオの活用方法―実践的取り組み―」(2011年12月10日)における話題提供「高度情報処理技術者を目指す学士力の育成―ポートフォリオ評価によるコミュニケーション―」(話題提供者:藤田悟教授)にて報告されています。第7回FDフォーラムの内容は「法政大学教育研究」第3号(紀要)に掲載される予定です。