主体的な学習への動機づけとしてのフィールドスタディとは
3泊4日のフィールド体験と90分の事前事後講義各一回という文科省の要件に従って設置され実施されてきたフィールドスタディは、人間環境学部の教育の目玉の一つともいえます。しかし、実際のところ、この要件にのみ添う形では大学教育としての実質的な成果は期待薄のように思えます。「体験することの新鮮さや驚き」は、ある意味では、事前のしっかりした学習と関心、それと事後のフィードバックなくしては、ただの物見遊山に堕する危険性があると考えられるからです。そこで、私の場合には、事前講義を最低4回実施し、参加学生約20名をテーマごとにチーム分けし、各講義を学生中心の発表会とし、各チームの全員が漏れなく必ずプレゼンするようにしています。このことは、教員側としては、まどろっこしいかもしれませんが、学生同士が自分たちで話し合い、自分たちでそれぞれ小さなテーマを設定し、レジュメやパワーポイントを用いて発表しあうという点では、主体的な学習効果を挙げています。その結果、現場でも決して受身になることなく、とんちんかんでも自分たちの疑問をぶつける勇気と自信をもって対応しています。もちろん、体験後は、各自がひとつのテーマを自分で設定し、みずから発見した疑問や問題について、用意した「レポート・論文作成の作法」に則って4000字以上のレポートを書いてもらうことにしています。「書くこと」は、「話すこと」と異なり、自分の考えをはっきり認識することに役立ちます。このように、私は、体験は「学習の始まり」の契機と捉えていますので、その始まりに、どのような方向性と力を参加学生の一人ひとりに与えられるかが、フィールドスタディ担当教員の役割ではないかと考えております。