双方向・参加型講義の試み

「双方向・参加型」の講義では、教員が一方的に話すのではなく、テーマに沿って学生同士が議論し、学び合うことに力点があります。教員は、議論の材料を提供し、議論の結果を集約して学生にフィードバックします。学生は講義に出席し、自分の意見を述べ、考えを文章にまとめることが求められます。単なる感想は評価対象になりません。私の場合、いわゆる「出席点」はなく、毎回の提出物の内容が評価の50%に相当し、残り50%はレポートや試験です。 講義の大まかな流れは次のようなものです。 implement_lecture_participatory_0001 与えられたテーマについて教科書等で事前学習をしてくる → 講義を聴く → グループ(3~6名)でディスカッションする → 議論を踏まえ、各自が考えをA4一枚にまとめて書く → 教員に提出 → 教員は議論を集約して、次回の講義で紹介~ 従来通りの講義がよいか、双方向の講義がよいかは一概には言えません。学生に多少の予備知識があり、予習可能であれば、双方向講義は選択肢の一つになります。議論になじめない学生もいるので、必修科目での導入は慎重であるべきでしょう。 授業中に学生に議論をさせると、「雑談になって、まともな議論にならないのではないか」「議論に参加しない学生が出る」「教室が騒がしくなって、収拾がつかないのでは」といった懸念が教員側にはあるでしょう。また、議論に時間を割くために、「学生に教えるべき内容が減るのではないか」と疑問も出てきます。私もそう考えていた一人でした。 しかし、実際に議論をさせてみると、テーマさえ明確であれば、大半の学生は議論して自分の考えをまとめようとします。「なぜ○○なのか」といった問いかけがテーマとしては最適でしょう。中には雑談に終わるグループもありますが、まとめが思いつきでしかなく、評価外になるため、次第に事前学習や議論に力が入ってきます。 学生の議論をつぶさに見ていると、熱心な学生が他の学生に用語などの説明をしていることがあります。他の学生は真剣に耳を傾けています。私の経験では、学生同士が教え合うほうが学習効果は高いと思います。 講義を進めていくと、自主的にインターネットや文献で調べてくる学生が出てきます。その成果を学生たちと共有できるのは、双方向講義の副産物の一つかもしれません。