効果的な雑談の入れ方
これを書いている私が雑談を巧みに操って面白い授業をするのが得意だ、というわけではない。また授業内容がつまらないので雑談で時間をつぶしてごまかすのをよしとしている、というわけでもない。そうではなくて、雑談を効果的に活用したいと目論んでいるだけなので、具体的には参考にならないかも知れない(すみません)。
字面からすると無駄でしかない「雑」談を「効果的」に、というのは語義矛盾ではないかと思う方もおいでだろうが、ここまで読んでしまったら最後までおつきあいいただきたい。雑談は本当に無駄なのか。
90分という時間はけっして短くない。時間配分を計画的に考えてできるだけ多くの内容を伝えようと熱く語り続ける先生方にとっては充実の90分だろうし、そのテンションに90分間ずっとついて行くことができる学生だっているだろう。でも、聞く側として、しかも一日に何コマも受ける学生の立場で考えると、集中力がそんなに維持できるだろうか。
昔を振り返ると、私はそんな集中力などぜんぜんない学生だったので(念のため言っておくが、授業は大好きで毎年、シラバスを熟読しては取りたい授業が多くて困るようなイイコだった)、今になって覚えているのはむしろ先生たちのいろいろな雑談だ。日常のことから、本のことや、いろいろな先生方の奇人ぶりや学会の裏話まで。それが面白かったのは、1つには私が大学院に進むような学生だったからかもしれない。でも、去年(2010年度)のFDセンターの学生座談会で、どんな授業がいい授業なのか、学生たちに話し合ってもらったときにも「先生たちの素顔や本音が知りたい」などという可愛い意見も出ていたのも事実だ。
雑談もただの無駄ではなくて、教員の研究世界に興味を持たせたり、大学という場について理解し考える契機となったり、教員に親しみをもってもらうきっかけとなったりし得る。研究者として日常を送る私たちが、どんな関心を持ち、何を考えてこの社会で生きているのか。センセイの意外な一面が学生の共感を呼ぶこともあるだろうし、その学問と日常との結びつきに気付かせるような導入となることもあるだろう(と思う)。
雑談は「雑」談なので、計画的に入れるというのもそぐわなかろう。話の切れ目に、あるいは話のついでに、直接には関係ないかもしれないが、ちょっと関連するような面白い小ネタを思いついたら披露してみてはどうだろう。むしろ、それが学生に興味をもってもらうきっかけになるのではないだろうか(※私の学生時代の経験から言えば、ノートを取ってしまわないように、それが「脱線」「雑談」だということはちゃんと言う方がいいのだが)。