リポートは、授業で学んだ内容について、学生に深く考察させるのに有効な課題です。しかし、学生の文章力の著しい低下が指摘されているように、稚拙なリポートが多いのが実状です。学生に文章作成能力を習得させるためにも、リポートは今後ますます重要となってくると思われますが、学生の学習効果を上げるには、丁寧なガイダンスとフィードバックが大切です。
ガイダンス
リポートのテーマ、字数、提出期限、提出方法等、簡単な要項を伝えるだけでは、不十分といえるでしょう。教員がどのようなことを学生に学習させたいと考えているか、またどのようなリポートを期待しているかを明確に伝えて、実際にどのような作業をすればいいのか、学生が具体的なイメージを持てるようにしましょう。例えば、「~について論じなさい。」といった漠然としたテーマではなく、「AとBのうち、どちらの仮説を支持するか。支持する理由、しない理由をそれぞれ2点以上の事例を示して説明し、自分の主張を明確に述べなさい。」といった、具体的なテーマ設定をすれば、学生はリポートの構成についても学ぶことができるので、論旨のあやふやな文章が次第に改善されていくことになります。 なお、特に1年生の多い授業では、ガイダンスは時間をかけて行いましょう。なぜなら、それまで「作文」と「感想文」しか書いたことのない学生に対しては、「大学で求められるリポートとは何か」というところから、説明が必要だからです。2年生以上でも、書式、参考文献のあげ方等を習得していない学生は少なくありません。そうしたリポート作成の技術的な問題についても、時間をとって説明した方がよいでしょう。それができなければ、「手引きとなるプリントを配布する」「市販の文献を紹介する」等によって、学生に「リポートとは何か」を理解させておくべきです。
フィードバック
提出されたリポートを添削し、すぐに学生に返却する。その作業の必要性・重要性を認識していない教員は、まずいないでしょう。しかし、実際には、「時間がない」「受講生が多すぎてすぐに返却できない」等々の事情により、実行するのがなかなか難しいのもまた事実です。速やかに添削し、返却するのが理想ですが、それができない場合でも、何らかの方法でフィードバックを行うことが必要です。「模範解答を配布する」「リポートで多かった誤り、特徴的な問題点について、講義する」「学生をグループに分け、互いにリポートを読ませて批評させる」などが、効果的なフィードバックといわれています。 学期末に成績評価のためのリポートを提出させる場合は、フィードバックするのが難しいですが、「リポート回収直後に模範解答を配布する(掲示する)」ということならば可能ではないでしょうか。リポートの場合、「先生が自分の主観で採点してるんじゃないだろうか」と不信感を抱く学生もいたりしますが、模範解答を示したり、採点基準を明確にすることにより、そうした疑いも晴らすことができます。 リポートを提出しても、何の反応もないのでは、学生は学習意欲を失います。今一度、フィードバックの重要性を認識し、適切な方法を用いて、学習効果をあげましょう。
参考:
- 「文章論(文章添削):藤村耕治先生」
- 「英語授業(English_for_Certifying_Exams–Advanced):栩木玲子先生」
- 「講義授業の工夫:舩橋晴俊先生」
- 「学習への動機付けとしてのフィールドスタディとは:関口和男先生」