「ポートフォリオ」とは、本来、紙ばさみのことであり、写真家やデザイナー、建築家などが、自分の能力や技術の証明として自分の作品を顧客や雇い主に見せるためにまとめ、ファイルしたものを意味しています。また、経済分野においては所有する各種の金融資産の組み合わせのことを指して使われます。つまり何か意味のある物または情報をある目的のために1ヶ所に集めて整理したものと言えるでしょう。したがって、学習におけるポートフォリオは、学生が学習に付随する物または情報を誰かに見せるために1ヶ所に集めて整理したものを指しています。課題などで提出したレポートやプレゼンテーション資料などの、多くは紙媒体のあらゆる学習成果物を集めておきます。また、ポートフォリオは学習成果をただ集めるだけでなく、成果として見せたいものだけを選択し、その成果の要点を分かりやすくまとめ、整理していきます。その過程で学生は、学習を振り返ることができ、学習してきたことを深く理解するのに役立ちます。また、教員は学生のポートフォリオを見ることで、学生の努力や進歩といった学習のプロセスを知ることができます。「eポートフォリオ」とは、これら紙ベースの学習成果物を電子データとして管理するポートフォリオのことです。電子データとして扱うことで次のようなメリットが一例として挙げられます。 ・物理的にかさばらない ・テキストデータだけでなく、画像、音声、動画などのマルチメディアデータも扱うことが可能 ・コピー、編集、削除が容易 ・データを組み合わせるなどの再加工が容易 ・検索が可能 ・ネットワーク等を通じて公開することが可能 「eポートフォリオ」は、専用のツールでなくても、ホームページ作成ソフトやブログなどで作成し、学習の振り返りやその過程の評価に役立てることが可能です。しかし、この場合、作成する人が学習成果物であるファイルのひとつひとつを手作業で登録していく必要がありますし、見せたい人だけに公開するといった公開範囲を制限するのにも手間がかかります。その点、専用のeポートフォリオ・システムを使うと、LMS等の学習管理システムと連携してLMSに提出したファイルや成績などのデータ、学習の進捗状況などをeポートフォリオに自動的に取り込んだり、見せたい人にだけ公開を制限したりすることが比較的容易に実現できます。
eポートフォリオ・システム
eポートフォリオ・システムは、商用のものが各社から販売されていますが、誰もが無償で自由に導入することができるオープンソースソフトウェアもあります。オープンソースソフトウェアとしては、SakaiのOSP(Open Source Portfolio)というeポートフォリオツールとmaharaというシステムが有名です。どちらも開発には世界中の教育者も関わっており、これらのシステムの設計・開発には教育や学習に関する知見が活かされています。 情報メディア教育研究センターでは、Sakai*やmaharaに加え、学部や学科と共同で開発したeポートフォリオ・システムを活用した実践的な研究を行なっています。eポートフォリオ・システムの導入および教育支援なども行なっていますので、もしご興味を持たれた先生がいらっしゃいましたらお気軽にご相談ください。 Sakaiは授業支援システム(H’etudes)の基盤としても利用されていますが、OSPの機能は公開されていません
学内の事例
本学でもeポートフォリオを導入し、授業や学習、教員と学生のコミュニケーションに役立てている事例がいくつかありますので、以下にご紹介したいと思います。 ・利用システム「mahara」 国際文化学部 – 学習コミュニティの構築※ キャリアデザイン学部 – 学習活動の振り返りと学習履歴や学習成果公開による自らのキャリア意識の形成※ ・独自開発システム デザイン工学部建築学科 – 実習作品の蓄積※ 情報科学部 – 学生とのコミュニケーションとキャリア支援 ※情報メディア教育研究センターにより技術提供がされています。
参考リンク
- 情報メディア教育研究センター (http://www.media.hosei.ac.jp/)
- Sakai Project (http://www.sakaiproject.org/)
- mahara (https://mahara.org/)