シラバスは「学生との契約書」

シラバスは「学生との契約書」 受講前に授業内容を正しく知らせる

シラバスは「学生との契約書」です。どのような授業内容を展開する予定なのか,教育目標や成績評価基準はどうなっているのか,教科書は何か,授業外の学習として何を要求するのか……これらを書く上で重要なのは「契約違反をしない」ことです。受講前には授業内容を知ることが難しくても,学生は履修科目を決定しなくてはなりません。シラバスは,そのような学生たちに与えられた唯一の「公式文書」です。シラバスを読んで受講を決めたのに,いざ授業が始まったらシラバスに書かれていることがまったく考慮されなかったとしたら「契約違反」です。学生は履修登録科目を容易に変更できませんし,履修登録単位数の制約の中で,あなたの授業を選んでいるのです。「思っていた授業と違った」理由が,学生の一方的な思い込みとの齟齬であればともかく,「シラバスに書かれていることと違った」のでは,学生の時間と授業料を無駄にさせることになりかねません。

計画を立ててこそ,改善・修正点も明確になる

授業は「学生と共に作っていくもの」ですから完全に予定通りに進行するとは限りません。それでもシラバスから極力,逸脱しないように配慮したり,やむを得ない大きな変更を行う場合には受講生に了解を求めることが必要でしょう。そして,学期が終わったら,次年度の授業のために,シラバスを改訂しましょう。 事前に授業計画を立てるからこそ,事後に「どこを修正したらよいか」が明確になるのです。最初から漠然とした授業計画しかなければ,計画修正のしようもありません。 より詳しいアドバイスについては,名古屋大学高等教育研究センターのHP(http://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/)にある,「成長するティップス先生」や「ティップス先生からの7つの提案」 のページを参照していただければと思います。  

授業デザイン:到達目標の設定 学生に身につけてほしい能力の視点から

何ごとにつけ,成功の秘訣は周到な準備です。授業もその例外ではありません。半年間,あるいは,一年間の授業がうまく行くか行かないかは,授業の進行中にではなく,授業が始まる前,授業デザインの設計中に決まる,といっても過言ではありません。 授業デザインには三つの要素があります。(1)授業目標の設定,(2)教材の選定,(3)シラバスの作成です。教材・教科書とシラバスにつきましては,それぞれの項目をご参照ください。ここでは,授業目標の設定について述べたいと思います。 授業の目標を設定する際,学生の視点を取り入れることは大切です。授業における目標を定めることとは,教員が学生にどのようなことを学んでほしいのか,どのようなことができるようになってほしいのか,明確にすることです。目標がなければ,授業の設計はできません。また,学生の側からみても,到達目標が明確に示されなければ,受講するモチベーションが上がりません。授業目標を設定し,授業を設計するひとつは,授業スケジュールを遡行するやり方です。授業の総決算として期末テストやリポートがあります。教員は,学生が期末テストで優秀な成績をおさめてほしい,すばらしいリポートを提出してほしい,と願っていると思います。優秀な成績を残し,すばらしいリポートを書くために必要な事柄を,逆算して,授業に盛り込みます。その際,留意したいことは,教員には学生に教えたいことが山ほどあると思いますが,学生の予備知識と授業時間に限りがあることです。その他,カリキュラム全体に占める科目の位置,授業形態,教室環境,受講者数を考慮に入れることも必要でしょう。限られた時間のなか,授業内容のレベルを下げることなく,学生が十分理解できるよう,工夫した授業デザインを描きたいものです。  

参考:

様々な授業形態」/「教科書」/高村雅彦先生「視覚的な授業

参考書目:アラン・ブリンクリ他(小原芳明監訳)「シカゴ大学教授法ハンドブック」玉川大学出版部,2005,p.11-25