シラバスとは

シラバスとは

最初に、ぼくとシラバスとの出会いについて書かせていただきます。1987年、客員研究員としてケンブリッジ大学に赴いた際、大学全体のシラバスが街の書店で販売されていました。これは驚きでした。驚きとは、お金を出して買ってくれる人がいること。さらに、シラバスはお金をとるに値するものであること。したがって、シラバスの内容に責任を持てること。大学全体のシラバスの他、各学科がより詳しいシラバスを出しており(ぼくの場合は英文科)、それを見ると、何月何日何時、A教授によるXに関する授業が行われると、授業内容も含めて記載されています。出たい授業が一目でわかり、とても便利でした。ケンブリッジ大学は、1年3学期制で、学期当たりの授業回数は少ないなどの違いがあるので、その制度がそのまま日本に当てはまるとは思いません。しかし、学生が、自分の履修したい授業を選択する際、便利だろうなとは思いました。 シラバスとは、教師がコースの初めに学生に示す授業計画です。そして、学生はシラバスを見て、授業を履修するかどうか判断するわけですから、シラバスは単位取得に関する教師と学生との間の約束ごと、つまり契約であるともいえます。それゆえ、シラバスに契約条件として必要・十分な情報を盛り込む必要があります。 一見、シラバスを書くことは面倒です。しかし、大きなメリットがあります。前年度の授業改善アンケートを参考にして、あるいは教室における学生の年度ごとの変化を嗅ぎとって、具体的に授業計画を手直しする絶好の機会となります。また、シラバスは教師と学生との約束ごとゆえ、両者が授業をより充実したものにしたいと努める契機となりえます。学生はそれまで知らなかったことを知り、それまで体験しなかったことを体験する喜びと驚きを求めています。それに応えるべく、教師と学生とが協力して、授業を作り上げる、大切な第一歩になります。

シラバスの書き方

シラバスにどのような情報を記載すべきなのかは、Webシラバスに入稿する際、入力項目として、必須な項目が7つ、任意の項目が3つ示されています。書き方につきましては、「入稿ガイド」をご覧ください。また、シラバスの具体的な書き方につきましては、法政大学には優れたシラバスを書かれる先生方がおられますので、その先生方のシラバスを参考にされるのがよいと考えます。 ここでは、必須な項目のうち、「授業計画」と「授業外に行うべき学習活動(準備学習等)」について述べるにとどめます。学生の立場に立ってシラバスのメリットを考えますと、(1)自分たちがコースのどこにいて、どこに向かっているのかを知ることで、学習の見取り図が描け、安定した勉強ができること、(2)授業時間だけでは不十分ですので、教室外での学習活動の案内役となり、教室外での学習を促すこと、が挙げられます。(1)は授業計画に関連します。授業計画のない授業はありえませんが、なるべく具体的に書くべきです。授業をダイナミックにするため、直近の時事問題・ニュースを取り上げるので、計画を立てにくいというご意見があります。そのような場合、前年度の例を挙げられれば、学生は授業内容をイメージしやすいのではないでしょうか。(2)について、日常ゆえに盲点となりがちなのですが、大学においては、授業内の学習時間は相対的に少ないといえます。学生に学んでほしい内容は山ほどあるのに、授業に使える時間は圧倒的に少ない。いくら教え方を工夫しても間に合いません。解決策は授業外の学習時間を利用することです。この点、文部科学省も同意見です。ところで、授業外の学習時間は無限にあるわけではありません。学生は他の複数の授業も履修しています。他の授業に要する時間を考慮したうえで、授業外の学習を課す必要があります。 ぼく自身の経験を悪い例として挙げます。オムニバス形式で行う講義科目のコーディネーターを務めたことがあります。試験結果は散々でした。理由は、授業改善アンケートを見て、判明しました。授業時間外の学習を「ほとんど行ってない」と「週30分未満」を合わせると、受講生の90%に上ります。学生に授業外の学習活動をさせる必要を痛感しました。先生方は授業時間の何倍もご自分で勉強されたと思います。しかし、ユニバーサル化のすすんだ現在、授業の到達目標を視野において、授業時間外の学習を活用しない手はありません。