キャリア体験学習(インターンシップ)プログラム
キャリアデザイン学部は2003年設立された。キャリア体験学習はその翌年の2004年4月、二年生から受講可能な科目として誕生した(2,3,4年生対象,2回まで受講可能)。当初4名の教員で担当。学部定員約300人に対し現在約120名/年の学生が受講している。受入れ先(実習先)には、民間企業・NPO法人・地方公共団体の3分野をカバーし約40機関を準備した。実習期間は原則夏休みである。
自らの意思で社会とのつながりを深め行動する。社会をいろいろな角度から学ぶ。20歳前後の学生の自主性や主体性を喚起することが大きな目的である。「行った。見た」の視察型でない、先方で役に立つ戦力型を目指した。実習先ではコミュニケーションをきちんととるよう、そしてそこで培われた人との関係は大切にするように強く指導している。
授業では個別に面接をして志望先を決める。学生はその前に志望書や履歴書などを提出しなければいけない。実習先が決まった後も種々の事務手続き・書類手続きが待っている。受入れ先に電話する。アポイントをとって面談する。スケジュールを調整する。大学と実習先との書類関係も学生が主体となって作成する。実習期間中は業務日誌を書く。それらが単位取得の要件である。もちろん実習終了後はお礼状も送る。教員は介入しない。学生から進捗報告は受けるが、あくまでも学生自らが動き意思決定せざるを得ないようなプログラムに設計している。
実習後(後期)授業では実習報告のスピーチを行う。そして期末にはそれぞれの体験をグループワークで共有し発表会を行っている。学生にとっては事務手続きの実践・体験学習報告書の提出・発表会準備とデジタル情報の作成とかなりの負担になるが、よくこなしている。プロのアナウンサーの指導を受けて実習先に再度出向いてインタビューなどを行い、DVD作品をつくる。そのようなことも試験的に実施している。
約7年が経過した。その間、次の三つのプログラムが追加されている。中小企業の商品開発のお手伝いをする産学連携プログラム、北京大学と提携して中国人学生とともに現地企業を訪問し交流を深める国際体験学習、そして地方公共団体主催の大学生・院生向けの地域創生プログラムに参加しつつ事務局の仕事も行うフィールドスタディ型である。担当教員も一名増員され、キャリアアドバイザー(1名)の方にもお手伝いいただいている。産学連携プログラムでは新製品開発に成功しテレビ東京WBSのトレンドたまごに紹介されることもあった。
実習後の学生の変身ぶりには目を見張らされることが多い。ダンスに明け暮れ何をしたいのかよくわからず実習先を決めるのに最後の最後まで悩まされた女子学生が、受け答えも明快になり仕事を任せられる人材に育った事例。また、電車を会社とは逆方向に乗ってしまって「どうすればよいか」と電話をかけ来た学生、確かに優柔不断でこれでは使いものにならないなと思わせた男子学生だったがアルバイト代をもらえるまでに成長して帰ってきた事例。さらには、実習先の人間模様に憤り不条理を訴え電話口で泣き崩れた女子学生がいた。彼女は働くということを真剣に考えた。今は立派に自分の道を決めて歩んでいる。その他、実習先で出会った人に紹介されてエージェントで働き始めた学生。そして実習先で見込まれてそこがアルバイト先となった学生もいる。このようなエピソードは枚挙にいとまがない。学生にとっては異文化空間。様々なドラマが展開されている。
このプログラムは基本的に趣旨に賛同してくださった方々のご協力によるところが大きかった。しかし時代は変わりつつある。インターンシップを採用活動の一環として3年生向けに公募の形式をとる企業が増えている。また、ビルのセキュリティ整備がインターン学生の管理を物理的に困難にしている。そして組織の管理強化が個人の善意によるやり方を難しくしていることも事実である。さらには企業機密(知的所有権)問題などに事務方が極めて神経質になり我々に難しい問題提起をされるなど、種々の問題が浮上している。
しかし、この体験学習は受け入れ先担当者その人の思い入れや熱意・情熱が学生に伝わり社会人との人間関係を形成するのに格好の場を提供しているのである。引き続き理解のある企業人との出会いを願うばかりである。